2026-06-13 · 仙台 · ブランド理論

顧客ベース・ブランド・エクイティとは何か――ケラーが変えたブランドの定義

「ブランドとは何か」という問いに、多くの経営者が「ロゴ」「スローガン」「知名度」と答えます。それは間違いではないのですが、その答えだけでは、なぜある企業のブランドが価格競争を回避できて、別の企業のブランドが価格以外で選ばれないのかを説明できません。この問いに理論的な答えを与えたのが、マーケティング研究者ケビン・レーン・ケラーの提唱した「顧客ベース・ブランド・エクイティ(CBBE)」という概念です。

ケラーはブランドを、消費者が企業のマーケティング活動に対して示す「差異的反応」として定義しました。同じ品質の製品でも、ブランド名がついているものとそうでないものでは、消費者の受け止め方が変わる。その差分こそがブランドの正体だというのです。ブランドの本体は、商標でも広告でもなく、消費者の記憶の中に形成された知識構造にある。この転換は、当時のブランド論において決定的なパラダイムシフトでした。

では、その知識構造はどう成り立っているのか。ケラーはブランド知識を「ブランド認知」と「ブランド・イメージ」に分けて整理しました。認知とは、そのブランドを思い出せるか、識別できるかという問題です。イメージとは、そのブランドと結びついた連想の集合であり、属性・便益・態度から構成されます。重要なのは、その連想が好意的で、強く、他と区別できる独自のものであるかどうかです。品質が高くても、消費者の頭の中でその品質と自社ブランドが結びついていなければ、ブランドとしての力は生まれません。

私が仙台でブランディングの支援をしていて痛感するのは、まさにここです。東北の中小企業には、確かな技術と誠実な仕事が根づいています。しかしその価値が、顧客の記憶の中で整理されていない。「あの会社に頼むと安心だ」という具体的な連想ではなく、なんとなくいい会社、という漠然とした印象で止まっている場合が多い。ケラーの言葉を借りれば、認知はあってもイメージの質が弱い状態です。

ケラーはさらに、ブランド構築を4段階のピラミッドとして体系化しました。「誰か」という存在確立(Identity)から始まり、「何者か」という意味形成(Meaning)、「どう評価されるか」という反応獲得(Response)、そして「どんな関係を持つか」という共鳴(Resonance)へと至る。このピラミッドは、ブランドが一夜にして育つものではなく、段階的に積み上げるものだという事実を教えてくれます。経営者が焦って「ブランディングをしたい」と思っても、そもそも自社が「誰か」を顧客に伝えられていなければ、どんな施策も空振りに終わります。

ブランドは「感性の問題」ではなく、「設計と測定の問題」です。顧客の頭の中に何を置き、どう連想させ、どのような関係を築くか。その設計を丁寧に行うことが、価格競争から抜け出す唯一の道です。ケラーの理論は、その設計の地図を与えてくれます。自社のブランドが今どの段階にあるのか、次に何をすべきか、一緒に整理したい経営者の方はご相談ください。

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