2026-06-13 · 仙台 · ブランド理論

日本ブランド論の系譜――延岡・阿久津・片平・田中が築いた知的交差点

日本のブランド論は、欧米理論をそのまま輸入したものではありません。ケラー、アーカー、カプフェレという3大権威の理論を参照しながらも、「高品質なのに儲からない」「良い会社なのに語れない」「モノは強いのに意味が弱い」という日本固有の課題に向き合い、独自の知的体系を築いてきた人たちがいます。その中心にいたのが、延岡健太郎・阿久津聡・片平秀貴・田中洋の4人です。

田中洋氏は、日本のブランド論を「学問として読めるようにした」人物です。中央大学名誉教授として日本マーケティング学会会長を歴任し、欧米の主要理論を日本の経営実務と接続する体系書を書き続けました。広告論、消費者行動論、ブランド戦略論を一冊に束ねるその仕事は、実務家にとって頼りになる地図でした。

片平秀貴氏は、東京大学でブランドを「人間・文化・社会現象」として研究した人物です。退官後も丸の内ブランドフォーラムを主宰し、経営者・芸術家・生活者が対話する場をつくり続けました。片平氏の視点は「ブランドは顧客の記憶の中に積み上がる預金口座のようなもの」というイメージに近く、数字だけでは捉えきれない愛着と関係性をブランド論の中心に置きました。

阿久津聡氏は、一橋大学ICSとバークレー・ハースという二つの知的環境で育ち、アーカーの理論を日本企業の組織能力・経営理念・健康経営と接続した人物です。彼の問いは「なぜ日本企業のブランド戦略はしばしば表層的になるのか」であり、答えは「ブランドが外部向けの広告ではなく、内部組織の能力として根付いていないから」でした。

延岡健太郎氏は、製造業の内側からブランド論に接近した人物です。一橋大学イノベーション研究センターで「価値づくり経営」を研究し、「高性能でも高価格が取れない日本の悲劇」の構造を明らかにしました。彼が辿り着いたのは「機能的価値だけでなく、意味的価値が必要だ」という結論。これは、ブランド論の言葉で言えば「製品の外側に意味を与えることがブランディングだ」という命題と同じです。

4人の仕事を俯瞰すると、一つの共通した問いが見えます。「日本企業の強みを、価格と選択に変えるには何が必要か」。この問いへの答えが、日本のブランド論です。私が仙台で支援する中小企業も、同じ問いの前にいます。技術・誠実さ・現場力はある。それを意味に変え、記憶に変え、関係に変えることが、私の仕事です。

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